この創作は、富士通版「ファンタスティックフォチュン」とオリジナルゲーム「時空の審判」の
キャラクターを兼ねあわせた二次創作です。
キャラ設定等、オリジナルとは異なることを予めお断りしておきます。


お年頃なティータイム

1 始まりはいつも唐突に

 のどかな昼下がりだった。窓から差し込む日差しは、眠りを誘うように暖かく、吹く風も秋らしい冷たさを含み始めているものの、まだまだ寒さよりも暖かさを感じさせる
「こーゆーときはあそこが一番よね。」
 クライン王国の王女ディアーナがにこっとシルフィスへ笑顔を向ける。
「あー、わたしも久しぶりに、そこへ行きたいなあ。」
 ディアーナを上回るにっこりした微笑みは絶対に何かをつかんでいる。二人に同じ反応されたのではシルフィスも覚悟を決めざるを得ず、気の向かないままに二人がご推薦の喫茶店というより、しゃれた高級カフェテリアへと入っていった。
「毎回同じ事を言うようですけど、ここであったことはいっさい他言無用ですからね。」
「はいはい。シーランティア王国とクライン王国の末永い繁栄のために、でしょ。」
「でもさ、シーランティアの跡継ぎってレイティア姫でしょ。なんか問題あるの?」
「で、ですから、ここでのことはいっさい、他言無用なんです!!」
 しつこいくらいにシルフィスに念を押され、3人のレディはウエイターの案内に従ってテーブルに着いた。
 さすがはグルメで有名なシーランティアのこと、メニューの豊富さが半端じゃない。3人はさんざん悩んだあげく同じものが重ならないようにケーキの盛り合わせを注文した。

 同じ頃、足早に道を歩いてきた一人の女性が、深い決意を秘めた表情でそのカフェテリアのドアの前で立ち止まる。
 ドアベルを探し、すぐに反応がないことに、一瞬困惑の表情を浮かべ、彼女は唇をかむと思い切ってドアに手を伸ばし、勢い良く開け放った。
 「ごめんくださいませ。」
 脳天を突き抜けるような高い声、その声が店の中に反響してしばらくこだました。
 その高級カフェテリアの名を「アニキの園」という…。労働時間前の待機組として好き勝手に時間を過ごしていたアニキたちも、あまりの大声に思わず手を止め、入って来た、場違いとしか表現しようのない女性に対して好奇の視線を向ける。
 「いらっしゃいませ、こちらにどのような御用でしょうか。」
 最初に立ち直ったのは、さすがと言うか当然と言うか、ホワイトアニキだった。しかしその顔は珍しく青ざめていたが…。
 「ええ、夫の行方を探しておりますの。」

 大きなお腹の上で、両手を祈りの形に組み合わせ、産み月間近と思われる女性は少し震える声で答える。
 今日まで、何度もためらい、それでも夫の残した手がかりは全てこの店を指していることに気付いてから、彼女は父親の力も借り、この店に夫が立ち寄った形跡くらいは見つからないかと調べてきた。それでも、夫の形跡どころか行方すらもこの数ヶ月つかめていない。

 「夫、と申されますと・・・・。」
 半ば、予想した答えが返ると知りながら、ホワイトアニキはさらに言葉を続ける。
 「申し遅れました。私、ジオード・アスレオンの妻で、セレスターナと申します。」
 ホワイトアニキは予想していた答えであったが、頭を抱えて床に座り込むか、天井を見上げて、今は薬の買い付けに出かけているジオードに対して小言を言いたい気持ちを押さえきれなくなった。
 数ヶ月前に、ジオードが半ば押しかけ居候になってしまってから、ここに来た以上は他の色アニキたちと同等に扱ってきた。そのために、家族の話などは特にすることなく日々を過ごしてきたのだが…ここでこんな不意打ちが来ると知っていたら……。

 セレスターナとは、とある有能な騎士隊長の娘であり、その美しさから、誰が彼女の心を射止めるかと、賭けの対象にもなっていた女性である。むろん、騎士団に所属するものであったら、多分誰もが知っている有名人であった。

 「もしかして、夫の行方をご存知なのですか。」
 彼の不審な態度に、何かを感じ取ったのか、セレスターナがホワイトアニキに詰め寄る。産み月間近であろう婦人に詰め寄られて、その迫力にホワイトアニキも一歩下がる。
 「教えてください、どんな手がかりでもかまいません。夫は自分が失踪するようなことがあったら、文机の中にある日記帳を読むようにと言い残して出かけました。その日記には、夫が探していた騎士の先輩の手がかりを、こちらのお店に見出した。と書かれていたのです。」
 セレスターナの言葉に、ホワイトアニキは、目の前にいないジオードの首をしめてやりたい衝動にかられた。どこまでも用意周到な…、それとも自分も懐かしさのあまり対応が甘すぎたのか…。ホワイトアニキは心の中で一つため息をついた。

 セレスターナは、賢いことでも評判の娘だった。嘘をついてもすぐ見抜かれるであろうし、何の確証もないまま踏み込んでくるような女性とも思えない。
 「確かに、数ヶ月前、騎士の方が訪ねてこられました。こちらで商人におろした薬の処方が、ある方に独特のものだという事で。しかし、それはこちらで作ったものでなかったもので、どのようにその薬を手に入れたかお伝えしました。その後、その方は帰られたものとばかり思っていましたが…。」
 ジオードが立ち寄ったと言う事実だけは隠さずに、ホワイトアニキは答えた。当然、夫にしたものと同じ話をして欲しい。という答えが返るものと、ホワイトアニキは身構えたのだが…。
 「……そうですか。」
 居心地が悪くなるような、長い間の後、返ってきた言葉はそれだけで…。その瞬間、ホワイトアニキは真剣に、アニキの園の移転計画までも考えていたのだ。
 「では、夫に伝えたと言うことを聞かせて頂けますか。」
 ホワイトアニキは、気のせいか、と思わずセレスターナの顔をまじまじと見つめた。
 「…分かりました。」
 冷汗をかきながら時間が過ぎ、セレスターナが帰る頃には、ホワイトアニキは久し振りに、気絶する前の心境を味わっていた。

 そして……。
 「ただいま帰りました。」
 能天気にこだまする、ことの元凶の声……。

 その一部始終を周りの客たちと同様興味津々で成り行きを見つめていたシルフィス、ディアーナ、メイの前に注文を追加していないのに最高級の紅茶のポットが影のオーナーの手ずから運ばれてきた。
「こちらは当店よりほんの御挨拶のしるしです。シルフィス殿、レオニス殿からいつもお噂は伺っておりますよ。ディアーナ姫におかれましてはさすがセイリオス殿下がご自慢されるだけあって美しくていらっしゃる。そうそう、メイ殿は近々魔導師の昇格試験を受けられるとかで連日魔法の塔に籠もっていらっしゃるそうですが。今日はたまの息抜きでございますか?」
 にっこり微笑まれた営業スマイルは地獄への案内人にも見えなくはない。
「お心遣い、ありがとうございます。美味しいお茶をいただいたらまっすぐそれぞれの部屋へ戻って眠りますわ。」
 暗にここで見たことは口外しない旨、ディアーナが代表して優雅に礼をとった。この場合、彼女以外、この手の外交駆け引きのできる人物はいないだろう。
「それではごゆっくりティータイムをお楽しみください。」
 何事もなかったように闇のオーナーはボーイを装って立ち去っていった。

 その後のジオードの行方を知るものは……?まあ、シーランティアにはたくさんいますけどね…。


シルフィス、ディアーナ、メイ
To be continued?

CG:ゆうえい様、創作:とーら様、アレンジ:NARU

BACK