■夢見るとき
クリスマスが近づくと、心当たりの人たちは何やら落ち着きがなくなってくる。
ようやく告白までにこぎ着けたウーナもその中のひとりだった。
しかし、面と向かって言うにはまだまだ相手の気持ちの盛り上がりに欠けるところがあり、ウーナとしては「これからどうなるの?」というのが正直なところだ。
鋭いのか鈍いのか、はっきりしないフォルトにヤキモキしているのが現状である。
「プレゼントは、もらうまでが嬉しいのよね。」
「そ、そうなの?」
つい先日もさりげなく話題を持ちかけてみたが、案の定フォルトの反応は今ひとつだった。
「フォルちゃん、ちゃんとわかってくれてるかなあ。」
人知れず、ため息を吐いては笑って誤魔化す日々がウーナに続いている。

一方、フォルトはフォルトで悩んでいた。
「今更聞けないよなあ・・・。」
ウーナのことはいつも見ているつもりだけど、今回のことだけはさっぱり心当たりがない。
クリスマスに贈り物をすることについては異論ないのだが、彼女の欲しがっているものがわからない。
先日の口振りから、欲しい物はすでにフォルトに伝えてあると取れるのだが、そういう話をした記憶がさっぱりないのである。
心当たりがあるとすれば、ただひとつ。
「音楽に夢中になって上の空でいたときに、聞き漏らしたのかなあ・・・。」
だとすれば、まさに万事休す。
しかし、ウーナの視線と合うと、何も言えなくなってしまい、曖昧に誤魔化してしまうのだった。
「困ったなあ。」
ウーナのことを考える度、フォルトは密かにため息を吐いていた。

クリスマスの当日、フォルトは恋人達の慣例だからとレイチェルに勧められて、イルミネーションの美しいツリーの下でウーナと待ち合わせをした。
「いい?ちゃ〜んとプレゼントを買ってから行くのよ。」
レイチェルは、何度も何度もフォルトに念押しした。
「う・・・ん。」
「なあに、その気のない返事は。しっかりしなさい、男の子!」
ばしっと背をしばたかれ、フォルトは追い立てられるようにツリーの下にやってきた。
フォルトの手には、クリスマスプレゼントというにはいかにも難のある袋がある。
「ウーナは、まだ来てないみたいだ。」
ほっと安心する反面で、フォルトはまたひとつため息を吐いた。
「・・・どうしよう。」
折から吹き付けてくる冷たい風と雑踏との狭間でフォルトはウーナが来るのを待ち続けた。

フォルトの立っているツリーの反対側にウーナはいた。
フォルトから待ち合わせにと聞いた時間より1時間以上前にウーナは来ていたのだ。
フォルトが手にしている包みを見たとき、ウーナは人知れず微笑んだ。
あの包み紙には見覚えがある。
マクベインに頼まれてジャンとリック用に特別の餌を買うときにいつも見る紙袋なのだ。
それを所在なげに抱えているということは、ウーナへのプレゼントは持ってないと思っていいだろう。
しかし、どこか思い詰めたような表情のフォルトにウーナは満足していた。

リンゴーン、リーンゴンと、約束の時を告げる鐘が鳴る。
ウーナはちょいちょいと前髪を撫で付けてひと呼吸置くと元気よくフォルトを目指して走り出す。
「フォルちゃ〜ん!」
「あ、ウーナ・・・。」
ウーナの声にどきっとしたようなフォルトの横顔が映し出された。
「ごめんね、待った?」
にっこり笑ってフォルトを見上げるウーナの笑顔は、いつにも増してチャーミングだ。
「あの、ウーナ。」
「なあに?」
「実は、その・・・僕、ウーナにプレゼントが・・・ないんだ。」
しどろもどろで告げたフォルトにウーナは悪戯っぽい瞳で微笑んだ。
「でも、フォルちゃん、わたしのこと、いっぱい考えてくれたでしょ。」
フォルトの驚いたような表情が、ウーナの言葉が事実であることを示している。

相手のことだけを想って考える時間。
悩んで思い詰めた時間が多いほど、相手への想いもまた深くなる。
その積み重ねが、想いを知る者への何よりのプレゼントになるのだ。

「だったら、いいの。」
ウーナは突っ立ったままのフォルトの腕にある袋に目を向けて言った。
「これ、ジャンとリックの御馳走でしょ?」
「う、うん。」
「だったら早く持って帰ってやらなきゃ。きっと待ちくたびれてるわ。」
「え?」
クリスマスはどうするんだと問いたげなフォルトにウーナは楽しそうに笑って答えた。
「フォルちゃんと一緒なら、どこでもいいの。」
ウーナは紙袋をフォルトの腕から取り上げると、そのまま自分の胸に抱え込んだ。
「ね、早く帰ろ。」
見上げたウーナにフォルトは頷くと、返事を返す代わりに空いた腕に彼女の身体を抱き寄せた。
「星降るクリスマスもたまにはいいよね。」
耳元にフォルトの声が響く。
ウーナの火照った頬にフォルトの冷たいくちびるが触れ、イルミネーションが二人の影をひとつに照らし合わせた。

フォルトとウーナの待ち合わせ

おわり
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