■ビッグ・サマー
エキュルにやってきたマクベイン一座は、ちょうど居合わせたシャオ&レイチェルと久しぶりに合同公演を張っている。いつもなら大入り満員の豪華メンバーなのだが、ここ数日は、はっきりいって閑古鳥が鳴いていた。理由は至って明白で・・・。
「あつい〜。」
 いつもお日様の下、元気いっぱいのアイーダですら公演を盛り上げるどころか、木陰でパタパタ扇いで涼んでいる始末である。
「いくら夏は暑いといっても、ここ数日の暑さは普通じゃないわ。」
 レイチェルがじっとり滲む汗を拭いながら強い日差しを避けて木陰に腰を下ろした。
「こう暑いとお客さんもサッパリね。この際だから、私達もいっそのこと、どこかへバカンスと洒落込んだ方が、いいんじゃない?」
 さりげない提案に真っ先に賛成したのはシャオだった。
「鋭気を養うのも芸の肥やしだよ〜ん。」
「確かに、たまには休養も必要じゃな。」
 マクベインの一言で公演の休演は決まったが、その後のあては正直なところ全くなかった。

「どこか行きたいとこがあれば、そこへ連れて行ってやるぞ。」
 不意に街角で声がして、キャプテン・トーマスが姿を現した。
「トーマス!どうしたの?」
 驚きながらも嬉しそうに駆け寄ったアイーダに更なる影が重なった。
「こんにちは、アイーダ。」
「あー、アリアさん!ということは、パルマンさんも一緒ね。」
 言い終わらないうちに、パルマンが顔を覗かせた。
「お久しぶりです。」
 懐かしい顔ぶれが集うと、その場に活気が戻ってきた。
「どうしたんですか?」
「アリアを迎えに来たついでにこちらへ寄ったところだったんです。」
 そつのない答えにアイーダは首を傾げた。
「でも、それになんでトーマスが一緒なの?」
「俺は、頼まれた伝言を届けたついでだ。ヌメロスからここまでプラネトス2世号ならあっという間だからな。」
 アイーダの質問に端的な答えを返したトーマスだが、それではさっぱり要領を得ないと当事者達を除いて首を捻っている。だが、それにはお構いなしで、トーマスは最初の話題に戻った。
「で、フォルト達はバカンスに行くんだろ?プラネトス2世号で行けるとこならどこでも連れて行ってやるぞ。」
 有り難い申し出ではあるが、急に言われてもすぐには行きたいところが思い浮かばない。
「涼しいところといったら、やっぱり山かなあ…。」
 ポツリとウーナが呟きかけた。

 そのウーナの声を遮るような大声が、突如として響いた。
「海じゃ!!」
「マックさん?」
「夏と言えば、海に決まっとる!!」
 特段行きたい場所がなかったこともあり、いつになくリキの入ったマクベインの主張に、一同はなんとなくその気になった。
「マックさんがそういうなら・・・。」
 はっきり言えば、一同、涼しければどこでもよいのである。
「でも、どこの海?」
 避暑地として良いところは、それこそシーズンの始めに押さえておかないと急にはみつからないものだ。言い出しっぺのマクベインとて、具体的な場所となるとすぐには思い浮かばなかった。彼らの故郷、ラコスパルマはこの際除外してあることはいうまでもない。
 考えあぐねているマクベインにパルマンがにこやかに提案した。
「よろしければ、我々と一緒にいかがですか?」
 パルマンに継いで、アリアもまたにっこり微笑んだ。
「実は私達も、ブロデインから招待を受けて避暑に行く途中なんです。」
「ということは、デュオール王子の招待?」
「ええ。ヌメロスと違って、あちらは穏やかな海に面していますからね。夏の避暑地の名所を目指して、浜辺の整備に力を注いでいるとのことです。今回の招待は、そのPRも兼ねていると申し添えてありました。」
「ということは、滞在費用は・・・。」
「全額ブロデインで負担するそうです。その代わり、できれば他にもPRしてくれそうな方を同行して欲しいとありまして。」
「なるほど、それでワシらに白羽の矢を立てたというわけじゃな。」
 苦笑混じりのパルマンにマクベインは顎髭をしごいた。確かに旅芸人としてヴェルトルーナ中を巡っているマクベイン達の好評を拍せば、かなりの宣伝効果が期待できるというものだ。しかもマクベイン一座を贔屓にしている人々には、その地の有力者が多いから、更なる効果が望める可能性が大である。
「デュオール王子って意外と商売上手なんだ。」
 思わず感嘆の声を漏らしたフォルトに、ウーナとアイーダはこっそり顔を見合わせ笑いを噛み締めている。
「どうしたの?」
 不思議そうなフォルトにふたりは何でもないと笑って誤魔化した。
「じゃあ、決まりだな。このままよければ出発するぞ。」
「あ、ちょっとだけ、待ってくれる?」
 トーマスの声にアイーダが待ったを掛けた。
「何だ?」
「あのね、どうしても持っていきたいものがあるの。」
「何をだ?」
「ナイショ。でも、すぐ、買ってくるから。」
 渋そうな顔をしたトーマスにウーナも口を挟んだ。
「あの、わたしもなんですけど。それで、レイチェルとアリアさんにもちょっと手伝ってもらいたくて。」
「ダメ?」
「本当にすぐ済むんだろうな。」
 女性の買い物が短時間で終わるとは到底思えないが、アイーダのお願いポーズには勝てないトーマスである。
「買ったらすぐ戻ってくるからね!!」
 威勢の良い声を残して、女性陣4人は街並みに姿を消した。

 4人の女性、正確にはアイーダとウーナに引っ張られたアリアとレイチェルが入ったのは、夏限定商品を置いているショップであった。
「海と言ったら、やっぱりコレよねっ。」
 はしゃいでいる彼女たちの目の前には、色鮮やかな最新の水着が並べられている。
「一度こういうの着てみたかったんだ。」
「その割には、おとなしめね。」
「えー、そうかなあ。」
「せめてこのくらいは、ね。」
 レイチェルがウーナに当てて見せたのは野性的なイメージのビキニである。
「い、いくらなんでもコレは無理よぅ。」
「あら、このくらい今時なら普通でしょ。」
「だって、胸が…。」
「あらら…(^^;」
「それって、絶対レイチェル向きだと思う。」
「あら、そんなことは…。」と言った割には色目といいサイズといい、ピッタリだったりする(笑)。
「で、アリアさんは?」
「いえ、私は…。」
 しかし、彼女の視線の先にはなかなかに悩ましげな水着があった。
「パルマンさん、真面目だもんね。」
「少しくらい刺激は必要よねっ。」
 言い訳する間もなく、その水着は売れていった。そして肝心なふたりはというと…。
「もうちょっと大胆なのを選んだ方がよかったかもねー。」
「いえいえ、初々しいおふたりにはこのくらいがよろしいのですよ。」
「ま、相手が相手だからね。」
 レイチェルとしては少しばかり物足りない選択ではあったが、店主の薦めもあり、そこそこのものに落ち着いた。
「じゃ、これで準備完了。プラネトス2世号に置いて行かれないうちに戻ろうか。」
「うん。」
 華やいだ笑いをまとって4人は待ちくたびれた男性陣の元へ戻ってきた。
「遅いぞ。」
「ごめんなさーい。」
「ったく、何を買ってたんだ?」
「えへへ、ナイショ。向こうに着いたら見せてあげるね。」
 それ以上の追求には、断固として黙りを決め込んでいる女性達に、トーマスは軽い溜め息を吐いた。
「ま、向こうへ着いてのお楽しみと言うヤツか。」
 そしてプラネトス2世号は遙々海を越え、ブロデインへ到着した。

 デュオール王子が自信を持って招いただけあって、そこは避暑地としては風景、設備とも最高であった。
「水が気持ちよくって、最高!」
 用意してきた水着に着替えた4人の女性達は、思い思いに海を楽しんでいる。
 対して男性達はというと…。
 マクベインとシャオは涼しい風の吹くコテージで一杯よろしくやってご機嫌である。
 華やいだ女性に免疫のなかった少年と青年は、急性貧血を起こして急遽、休養モードに突入。
 真面目すぎる青年は、女性達に何かあっては大変と、甲斐甲斐しく世話を焼き、それまでに免疫を付けていた青年だけが余裕であった。

楽しい夏をお過ごしください☆ミ

おわり

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