スター・A・スター

素敵なホリデー


うふっ。うふふ…。あー、駄目だ。顔面筋肉が緩みっぱなしでどうしても締まってくれない。
(ブルー、いい加減でその気味の悪い笑い方、止めてください。人に見られたらどうするんです?)
あたしのペット、宇宙たぬきのしんたが何度目かの忠告をしてきた。
んなコト言ったって、これが喜ばずにいられますか。
何たって休暇よ。き・ゅ・う・か!
たった1日とはいえ、今日あたしはルナと別行動で完全に自由の身なんだから!

そうそう、あたしの名前は、プロミネス・ブルー・ユリアン。17歳。
「銀河連邦宇宙交通局第六区安全指導係勤務」なんていう長ったらしい職務に就いてるけど、本職は、銀河連邦−略してG連−の名誉あるレッド・ソルジャー。
ただし、グリューネ・ルディーナ・クラスターという、見かけはすこぶるかわゆい女性とパートナーを組むって条件付き。
彼女、G連の科学アカデミーですら一目置いてる天才科学者なんだけど、ほら、よく言うじゃない?○○と紙一重って。
あの子の頭には、社会的通念とか常識なんてまるっきりないんだから!
でも、彼女とのチームワークは何よりも優先事項で。あー、頭痛い。

(ブルー、着陸態勢。管制塔より入電。)
「りょーかい!」
ルナと別行動なんで、しんたがナビゲーターを務めている。
しんたはルナを別として唯一あたしのナビゲーターが務まる生命体。
そん所そこらの新米オペレーターなんかメじゃないわ。
何より法規的な知識においては超一流。生きてる法律だもーん。

「さて、手続きも終わったし、それじゃ、行こうか?」
あたしは久々に地上に降り立った。
宇宙もいいけど、人間やっぱり大地に足を踏みしめて立つのが一番だわ。
しんたを左肩にのっけて、まずはウインドーショッピングを楽しむことにした。
荒っぽい仕事をしているとはいえ、あたしだって一応女の子。買い物大好き!
特にスポーツ専門店とかサイクルショップなんかは一日中いたって退屈しない。
今日のために選んだこの星は、シングルカー−所によってはバイクとか言うらしいけど−が交通手段として主流なの。
当然、その類のお店がたーっくさん。あー、目の保養。
しばし、あたしは幸せなひとときを噛みしめていた。

が、そういう星だから、当然その類の困った君達がいるんだよね。
突然外が騒がしくなり、あたしの血を騒がせる音が聞こえてきた。
(ブルー、ここは管轄外の惑星上です。)
しんたが耳元で囁いた。
そりゃそうだけど、管轄外だからと言って放っておくのも良心の痛みが。
だって、被害を受けるのは、弱い立場の一般市民なんだよ、しんた。

あたしは野次馬に混ざって表通りにでた。
キーキー、ピーピー、血の騒ぐ音が一段と大きくなる。
おー、いるわ。エア・バイクに跨ってへたっぴーな曲芸やってる。交通法もないなぁ、あの連中。
交通局のお仲間は?
一応来てるけど、あれじゃこの連中を追い払うのは無理だろうな。云いようにあしらわれてんの。
「しんた、あと頼むね。」
あたしは手近に転がっている空になったバイクに跨った。
無様に転げ落とされたパトロールマンが何か叫んでみたいだけど、無視。
「そーれっ!」
ウィリーよろしく、勢いつけて発進させた。

手始めに一般市民の通行の妨げになってるヤツのバイクをけっ飛ばす。
ルナ、特殊金属製のブーツ、実戦にも耐えれそうだよ。
それから、左へ廻して曲芸もどきの輪に侵入し、蹴散らす。
何人か体当たりのショックで投げ出されたようだけど、自業自得。
しかし、いくらあたしが頑張ってみたところで、とろいバイクに多勢に無勢。はっきり言って分が悪い。
ちょっと、早まったかしらん。

「ブルー、受け取って!」
突然上空から聞き覚えのある声がしたと思うと同時に、牽引ビームにのったあたしのエア・バイクが空中に放出された。
「ルナ!?」
なんであの子がここにいるのかなんて、今はどうでもいい。
「サンキュー!」
あたしは颯爽とジャンプして乗り換え、一気に攻勢に転じた。
コレさえあれば、鬼に金棒、怖いものナシ。全員反則切符切ってやる!
手当たり次第に追いかけては、不届きものをバイクから引きずり落とし、牽引ビーム上に放り投げる。
高速艇のルナが、ビームにのった連中をパトロールマンの目の前に落っことし、めでたく御用。
あっという間に交通法違反で全員逮捕。
ただ、さすがにリーダーらしき者には少々手間取った。
といっても、ルナに待ち伏せしてもらってドカンと一発吹っ飛ばしてチョン。
地面に叩き付けられる寸前をナイスキャッチ!
あ、でも今回は被害ゼロよ。
ちゃーんとそのあたり計算してやったんだから。
ついでまでに、あたしの行為は、越境行為だlけど、この程度なら一般協力ってことで済ませられるってしんたが言ってた。

「ルナ、よくここがわかったわね。」
「新式の探知機テストをしていたものですから。」
にこにこと笑ってる様子のルナにあたしはいやーな予感がした。
「うーん、感知度はいまいち低いけど、危険行為には的確な判断をする、と。」
でた!常に持ち歩いてる実験メモ。
ん?てことは、あたしでまた実験したわねっ!
「それより、ブルー、先程の爆発で腕に怪我をしたのではありませんか?」
問いつめようと思った矢先、これだもんね。
見ればブラウスが破れて血が出てる。
大したことはなさそうだけど、利き腕だから一応手当の必要があると認められる。
「ここの交通ステーションに寄って手当していただきましょう。」
あんまり寄りたくはないけど、タダで治療してもらうにはそれが一番。
「OK。ルナ、運転代わってくれる?」
「…ええ。いいですけど。」
ルナは当惑した表情でバイクの前に跨った。

あたしはルナに運転させたことをすぐに身をもって後悔した。だって。
「ば、だーーーーー!それは、あーーーーーーー!」
あの子、いきなりジェットエンジンフルパワーで発進したのよっ!
それも緊急発進モード。目の前数百メートルの交通ステーション目掛けて。
あたしたちをのせたまま、バイクはステーションビルに激突、スクラップと化した。
不幸中の幸いと言おうか、あたしたちは激突時の反動で放り出され、2階の窓ガラスを突き破ってビル内に入った。
勢い良く転がり込んだところは、交通事故課損害係の受付デスクの上。お話にならないわ。
本来なら、所属部署に報告の上、減点されて最悪免許停止処分を喰らうところだけど、大通りでのあたしの一般協力と
、ルナの技術協力が功をを奏して、器物損害書を書くことで事なきを得た。

あたしはしんたに手伝って貰いながら、複雑怪奇な損害届と賠償免責申請書をやっとこさで2人分書いた。
諸悪の根元はるんるんで技術協力の名の下に、怪しげなシステムを構築している。
あのデータの大半は、あたしの血と汗の結晶だということ、わかってんのかしら?
「…である。」
ようやく浄書の終わった書類をしんたに最終点検してもらった。
しんたがOKなら、どこに出しても問題ないもんね。
(結構ですよ、ブルー。)
「やったー!あー、やっと終わった。さ、しんた、遊びに行こう。」
元気良く立ち上がったあたしに、しんたは冷酷極まりないことを淡々と告げた。
(休暇は本日の19時をもって終了。直ちに帰還しなくては、次の勤務に間に合いません。ほら、ルディーナさんも帰ってきたし。)
そんなのあり!?あたしの休暇…。今度は、いつだっけ?


To be continued?