一本締め
今年は十二年に一度巡ってくる申年である。
「めでたいですなあ。」
「ほんに、めでとうございます。」
お祭り好き猿たちが、この機を逃すはずもなく、事に温泉街の長老達が中心に、一杯よろしくやっている。この年のために、どこの群でも特別な申酒が用意されているのである。むろん、長老だけでなく、若い猿たちも、うまくおこぼれに預かっているのはいうまでもない。除夜の鐘を聞きながらの一杯は、また格別な味がする。
やがて除夜の鐘も鳴り終わり、宴もたけなわを過ぎた頃、恒例のお開きがやってきた。全員が手頃な木の上に登って手を繋いで和になるのだ。今年も不届きものが現れないよう、一族の平和を祈っての締めである。
「では、各々方、よろしいかな。」
恒例に従って最長老が声をかける。
「よーお。」
声が終わらぬと同時に、ポンッと一本締めの音ががする。多くの長老達が要領よく一本締めをして、再び木の上で悠々としているのに比べ、若い猿のほとんどが一本締めで手を離した隙に木から落ちている。
「まだまだ修行が足りんのう。」と長老達は酒を片手に笑っていた。
CG:まささ様、創作:NARU
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