契約
 勉強、勉強、また、勉強。勉強に追われて疲れている気の毒なお得意様じゃない、学生諸君に朗報だよ。星の力を司る魔法使いを知ってるかい?その魔法使いがもうじきこの街に来るんだよ。ほら、よーく目をこらして窓の外を見ていてご覧。信じるものは救われる。きっと魔法使いは現れるよ。

「え、昨夜もまだ現れなかったって?おかしいなあ。君くらい願望が強けりゃ、リストのトップに載っていてもおかしくはないはずなのに。」
 僕は首をかしげた。
「よし、僕が今夜、仕事に入る前に君の名前があるかどうか確かめてきてあげるよ。あったら、優先的に連れてきてあげるね。やだな、君と僕の仲じゃないか。変な遠慮はなしだよ。」
 しかし、ああも調子よく言ったはいいが、実際、魔法の君は姿のかけらもみえやしない。おかしいなあ。
 しばらく探し回って丑三つ時にようやく姿を見つけることができたよ。
「随分探したんだよ。お得意様がいっぱいで困ってるんじゃないかい?」
 からかい半分に尋ねると、魔法の君は複雑そうな顔をした。
「それがそうでもなくてね。いざとなると、みんな尻込みしてしまうんだ。結局、まだ8件し契約が取れてないんだよ。君、どこか、契約してくれそうな上得意さんしらないかい。」
 おっと、そこまで苦戦しているとは知らなかったよ。確かに最近の子は度胸がないからねえ。するとあの子もダメかな。とはいえ、約束をしていた手前、彼の元に案内した。
 ここからはふたりの間だけの問題だ。彼が魔法の君と契約を結ぼうが断ろうが僕の関与するところじゃない。

 しばらく立って、上機嫌で魔法の君は出てきた。反対に彼は顔面蒼白だ。だが、ほんのり赤みも差しているところを見ると、そこそこの契約がむすばれたようだ。
「よかった、といっていいのかな」
「いいとおもうよ。君の紹介してくれた彼はなかなか強運の持ち主だった。この先思い通りに進学できることを星のルーレットに賭けたら、五年の寿命ですんだからね。後いくら彼の寿命が残っているかはしれないけど、普通なら幸せな出世コースの人生が送れるだろう。」
「そうだね。」
 僕は彼の過去帳を見ながらふっとため息をついた。まあ、人生絶頂時に魔法の君のお迎えが来るのも悪くないもんだろう。そのときに、魔法の君は銀の釜を掲げた死の使いとしてやってくるんだけどね
CG:CAROL様、創作:NARU
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