未来からのメロディ
窓を開けると初夏の眩しい陽光がシルフィスに降り注いできた。
「今日もいい天気になりそうですね。」
金色の髪がおりからの風に煽られ柔らかな弧を描いている。
「シルフィス!」
窓を全開しようと身を乗り出し掛けたシルフィスをキールの鋭い声がしたかと思うとあっという間に部屋の中へと引き込んだ。
「どうしたんですか、キール。」
訝しげな瞳がキールを仰ぐと不機嫌そうな声が返ってきた。
「そんなに身を乗り出したら危ないじゃないか。」
キールの仏頂面には慣れっこになっているシルフィスだが、ここしばらく何もない日が続いていた後だけに少しだけ眉を曇らせた。
「べ、べつに怒ったわけじゃない・・・。」
慌てて手を離し、ふいと横を向いたキールにシルフィスはにっこりと応じた。
「ええ、わかっています。」
無意識にシルフィスの手が腹部に重なっている。
手の平をとおして小さな鼓動が確かに伝わってきた。
シルフィスの中で、新しい生命が脈々と規則正しいメロディを奏でているのだ。
「・・・あなたがそんなに心配性だなんて知りませんでしたよ、キール。」
呆れるよりもむしろ戸惑いに近い驚きでもってシルフィスは微笑んだ。
「でも。」
シルフィスの碧色の瞳が柔らかな深みを増した。
「そんなあなただから、私は大好きなんです。」
はにかんだ微笑みは、出会った頃と少しも変わりがない。
キールは言葉を掛ける代わりに、そっとシルフィスの背に手をまわした。
いつになく穏やかな笑い声とやさしい抱擁がシルフィスを包み込む。
トクン、トクン、トクン。
大きな鼓動と小さな鼓動、そして微かな鼓動だけが静かに時を刻んでいった。
キール×シルフィス
創作:NARU、CG:れいり様(00.07.29)
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