女の意地

 それは同期の少年の何げない一言だった。
「おまえさぁ、最近、太ったんじゃないか?」
 訓練を終えたばかりのシルフィスはその場に凍り付いた。
 …太った?
 身に覚えがないわけではない。
シルフィスはとりたて甘いものが好きというわけではないのだが、ディアーナやメイとの付き合い上、近頃はよく菓子類を口にする機会があった。
おしゃべりと紅茶とお菓子は切っても切れない関係にある。

「あ、悪ぃ。気にすんなよ!なんとなーく、そんな気がしただけだからさ」
 予想外の反応に驚いてガゼルは慌ててフォローしたのだが、遅かった。
その言葉はシルフィスの心にずっしりと重くのしかかっていた。
 これ以上、体重が増えたら…。
 シルフィスはある魔導士の身体データを友人から得ていた。
 「好きな人のことって、何でも知りたいでしょ」と、わざわざ、どこからか聞き出してくれたらしい。
 そのデータによると、現在、彼の魔導士と自分の身長差は七センチ、体重差は三キロ…。
身長はそうそう伸びないだろうが、体重はあっと言う間に増える。
 未分化とはいえ、女として好きな人よりも、重くなるわけにはいかない。
 誰にも言えない決意を胸に秘めるシルフィスだった。

おわり

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