時の運

お忍びから帰ったディアーナは王宮の門のところで、これから出掛けようとしているアイシュに出会った。
注意はされたものの、社会勉強も必要と思っているためか、くどくどお説教されることはなかった。
アイシュは騎士団宿舎に差し入れを持って行くところだという。
勿論、恋人であるシルフィスに会うのが第一の目的である。

 ちょっと、ガゼルには気の毒ですわね。

 銀髪の少年も又、シルフィスに恋していたことをディアーナは知っていた。
シルフィスをデートに誘い、ドレスを着せたりしたのは、なかなかの快挙であったと思われるのだが、
シルフィスには通じなかったらしい。
時々、驚くほどシルフィスは鈍感だ。

 鈍い、と言えば…。

 ディアーナはしげしげとアイシュを見た。
 なんでしょうかーとのんびりした口調でアイシュが問う。
「…いつごろから、シルフィスを女性として意識し始めましたの?シルフィスは未分化でしたでしょう?」
「そうですねぇ−、町中でドレスを着ているのを見かけた時が始まりだった気がしますー」
 とても、かわいらしくてーと、照れながらアイシュは言った。

 …ガゼル、墓穴を掘りましたわね。

 アイシュのことだ。
もし、シルフィスを女性として意識しないままであったら、自覚する頃には手遅れになっていた可能性は大である。
偶然、アイシュがガゼルによってドレスを着せられたシルフィスを見かけなければ、勝敗は変わっていたかもしれない。

 これもまた時の運というものかしら。

 自分も好機を逃さないようにしようと肝に銘じながら、ディアーナは青い髪の魔導士の執務室に向かった。

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