双子

 ある日、王宮から帰ったメイが言った。
「キールの嘘つき。全然、違うじゃん」
 キールはゆっくり瞬きした。
「何のことだ?」
「何って、アイシュの…あ、シルフィス!ちょっと聞いてよ−!」
 メイは訪ねて来た友人にぶんぶんと手をふって、そのまま走り去ってしまった。
 …一体、なんだというんだ?
 キールはしばらくの間、首を傾げていたが、やがて気にすることをやめて自室に引き上げた。

 筆頭魔導士の執務室を訪問したキールはその帰りに中庭の前を通り掛かった。
 ふと噴水の方角に目を向けると地面にはいつくばって何かを探している双子の兄の姿が見えた。
「何やってんだ?」
「あぁ、その声はキールですね〜」
 振り向いたアイシュを見た瞬間、キールは思った。
 誰だ、こいつ?
 分厚い眼鏡のない顔は双子の弟である自分と似ても似つかなかった。
「すみませんが、眼鏡探すの手伝ってもらえませんか〜?」
 そう言えば、とキールは気付いた。
 アイシュが眼鏡をかけるようになってから、自分はその素顔を一度も見たことがない。
 記憶の中で双子の兄は常に自分と同じ顔であり、当然、今もそうなのだろうと勝手に思いこんでいたのだ。
 …このことか、メイが言っていたのは。
 かつて、キールはメイにアイシュと自分は同じ顔をしていると言ったことがある。
 だが、実際はとてもでないが、同じ顔には見えない。
 ようやくメイの言葉に納得したキールであった。

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