やぶへび

 結婚祝いと称して、新婚夫婦の冷かしに青い髪の魔導士は町中の小さな研究所を訪問していた。
研究所の主の新妻がお茶の用意をするために席を外した時、シオンはふと思い付いたことを口にした。
「…純粋に学問的な興味から聞くんだが、アンヘル族の女は、普通の女とどこか違ったりするのか?」
「並外れて美しいということ以外、他の女と違いはないと思いますが」
 相も変わらぬぶっきらぼうな口調でキールが答える。
シオンはまじまじと後輩たる魔導士を見た。
「なにか?」
「いや…べつに」
 こいつ、自分が堂々とのろけているという自覚はないらしいな。
 シオンは軽く肩を竦めた。シルフィスがお茶を持って戻って来たので、その話題はそこで打ち切られた。

 シオンが帰った後、シルフィスはキールに向き直るとにっこり笑って言った。
「ひとつ聞きたいことがあるんですけど」
「なんだよ?」
「アンヘル族の女性と他の女性とに違いはないというのは、どこの女性と比較して導かれた結論なのでしょうか?」
 口元は笑みを浮かべているが、シルフィスの目は少しも笑っていなかった。

 青い髪の魔導士の訪問があった日、キールは王宮の書庫で夜明しするはめになったという…。

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