モンスターをやっつけろ!
近衛騎士団第3部隊のスケジュールボードの前で何人かの騎士が額を寄せ合っている。
「まずいな・・。」
「おい、お前、なんとかならないのか?」
「無茶を言うな。この間、回ってきたばかりなんだぞ。」
「しかし、2人1組が原則なんだろ?」
「なら、お前が行けよ。」
ひそひそと互いが擦り合っている。
「・・・誰かひとりくらい、残らないかな?」
「うーん・・・そう言えば、新入りがいたな。」
ぽんと手を打った先に、噂の新人の一人が廊下を歩いている姿が彼らの目に映った。
「・・・そうだな。」
こそこそと彼らは散開した。

人気のなくなったスケジュールボードの前で、騎士見習いであるシルフィス・カストリーズは足を止めた。
一日一回は、このボードで騎士団のスケジュールを確認するよう義務づけられている。
無駄なく訓練スケジュールを立てるためにシルフィスは毎日見に来ていた。
「えーっと、隊長の予定は・・・明日は巡回か。じゃ、訓練はお休みだな。久しぶりにゆっくりできそうだ。」
その他の伝言事項を確認して、シルフィスは部屋に戻っていった。

翌朝のことである。
のんびり構えていたシルフィスは、唐突に隊長レオニスの訪問を受けた。
「突然、すまんな。」
「いえ、あの、何か?」
レオニスは少し言い難そうに、「今日の街の巡回を手伝ってくれないか。」と言った。
「本来はお前に頼む事ではないのだが・・・、あいにく他のものは出払っていてな。」
「いいえ、私でお手伝い出来ますなら、喜んで。」
シルフィスは日頃の訓練成果を見てもらえるまたとないチャンスだと即答した。
「・・・そうか、助かる。剣は私の予備を貸そう。」
ほっとしたレオニスに、シルフィスは元気良く返事して、後に付いていった。

初めての巡回任務は、シルフィスにとって、結構きついものであった。
「疲れたか?」
と声を掛けられ、シルフィスは自分の未熟さを恥ずかしく思ったが素直に頷いた。
「・・・結構ハードなんですね、巡回って・・・。甘く見てました。」
「体力もだが、精神的にも消耗するからな。」
レオニスはシルフィスを気遣ってか歩調をゆっくりとりはじめた。
それでも、次第にシルフィスの足取りは遅れがちになっていく。
「・・・少し休むか?」
シルフィスは慌てて首を振った。
「 ・・・無理はするな。倒れられても、困る。」
レオニスは手近に見えた木陰に入るとシルフィスを腰掛けさせ、自分は水を探しに出向いていった。
「近くに小川がある。すぐ戻る。」
「すみません。」
「つきあわせてているのは私だからな。・・・座っていろ。」
ペコリと頭を下げたシルフィスに、レオニスは気にするなと手をあげた。

レオニスの姿が見えなくなると、シルフィスは一人溜め息をついた。
自分では自信を持っていたつもりであったが、こうもあっさりと体力の限界がきてしまうと、流石に情けなくて同時に悔しくもあった。
「先輩達ならもっと上手く務まるんだろうな。」
風がシルフィスに吹きつけてくる。
少しきつめの風だが、今のシルフィスにはそれが心地よかった。
しばらくはぼんやり風に当たっていたが、そのうち、その風に異臭が混じりはじめた。
「何の匂いだろう?」
訝って風上に目を向けたとき、シルフィスは異臭を発しているモノの姿を捉えた。
「モンスター!どうして、こんな所に!」
反射的に剣に手が伸びる。

モンスターは真っ直ぐシルフィス目指して飛びかかってきた。
「うわっ!」
辛うじてその牙を逃れたものの、とても剣を抜くヒマがない。
しかし、この場には自分しかいないのである。
「なんとかするしかないのか・・・。」
シルフィスは剣を握りしめダッシュした。
モンスターがシルフィスを追ってくる。
シルフィスは走りながらようやく剣を抜いた。
「くそっ。これでもくらえ!」
振り向きざま、力任せに剣をモンスターに叩き付けたが、敢え無く空振りに終わり、反対にその牙を肩に受けてしまった。
「くっ!」
引きちぎられた服から皮膚が裂け、血がにじみ出した。
傷の痛みに剣を持つ手の力が抜けていくのがわかる。
「・・・もっと剣が上達していれば。」
唇を噛んだシルフィスの瞳に、容赦なく襲いかかってくるモンスターが映し出された。
「ダメだ、やられるっ!」

その時、黒い影がシルフィスの前をよぎった。
「たあっ!」
鋭い気合いと共に、モンスターの絶叫がこだまする。
「た、隊長!?」
シルフィスの前に大剣を構えたレオニスがいた。
「・・・まだ、こんな生き物が残っていたとはな。」
凍れる視線がモンスターを射る。
「隊長・・・。」
思わず安堵の声を漏らしたシルフィスだったが、次の瞬間、レオニスのセリフに耳を疑った。
「世のため人のため、モンスターの野望を打ち砕く近衛騎士団第3部隊!この正義の刃の輝きをおそれぬのならば、かかってこい!」

茫然としたシルフィスの前で、レオニスの剣技がモンスターを倒していく。
血の匂いを嗅ぎ付けてどこからともなく集まってきたモンスターにも動ずることなく、レオニスはひとりで立ち向かっていった。
「おっと、あまいな!」
時折レオニスの剣をすり抜けて牙を剥いてくるモンスターもいたが、所詮敵ではない。
「正義の刃の輝きを受け、今、必殺のクライン・アタッーーーク!」
その群のボスらしき最後の1匹にレオニスが挑んでいく。
「騎士団・クラッーーーーシュ!」
満身の力を込めたレオニスの刃がモンスターを一撃のもとに打ち倒した。

「大丈夫か?」
傷の痛みも忘れるほど呆然と立ちつくしているシルフィスにレオニスが振り返って尋ねた。
「・・・肩を噛まれたのか?」
レオニスの手が傷口に触れ、シルフィスはその衝撃で我に返った。
「いたっ!」
「少し痛むが我慢してくれ。」
レオニスは慣れた手つきでシルフィスの傷口を消毒した。
「一人にしてすまなかった。」
「いえ、不覚をとった自分が未熟なのです。」
謝るレオニスにシルフィスは恐縮するばかりである。
「なに、この次に挽回すればいい。」
「はい・・・?」
思わず見あげたシルフィスにレオニスはフッと笑みを返す。
「この世にモンスターある限り、我がクレベール家の正義の刃がそれを討つ。」
熱く燃えるレオニスの瞳にシルフィスは持ち前の正義感が沸々とわき上がってくるのを感じた。
「私と共に来るか、シルフィス?」
「はいっ、隊長!」
レオニスの逞しい腕がシルフィスの華奢な躰にまわされる。
「お前が無事でよかった。さあ、帰ろう。」

レオニスは巨大な邸宅にシルフィスを伴った。
「お帰りなさいませ、レオニス様。」
品の良い、いかにも執事といった風体の初老の男性が二人を迎えに出てきた。
「シルフィス、紹介しておこう。彼はギャリソン、見てのとおりこの家の事いっさいを任せてある。」
「ギャリソン・トキタと申します。ギャリソンとお呼び下さいませ、シルフィス様。」
ギャリソンは恭しく一礼してシルフィスを迎え入れた。
シルフィスの新しい日々が始まる。

おわり
<あとがき>
ただ今、どっぷりはまってるゲーム「ファンタスティックフォーチュン」のイベントが元ネタです。
なんで「無敵鋼人ダイターン3」((C)創通エージェンシー・サンライズ)なのかは、レオニス役が鈴置洋孝氏だから(^^;
レオニスはとっても無口で愛想がないっていう設定ですが、我らが万丈サマは・・・。
つい、出来心ですぅ〜(汗)
正義感が強いヒロインなら、きっと良きアシスタントが務まるんじゃないかなーなどど思ったのです。
ちなみにシルフィスはレイカタイプだと、勝手に決めつけております。
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